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瀬戸内海研究フォーラム in 広島

投稿日:2019年5月20日

テーマ
瀬戸内海における持続可能な開発目標(SDGs)に向けた里水と里海の連携

テーマ 瀬戸内海における持続可能な開発目標(SDGs)に向けた里水と里海の連携
日程 2019年9月5日(木)~6日(金)
場所 広島市西区民文化センター(ホール、ギャラリー)
参加人数 242人
資料 瀬戸内海研究フォーラム in 広島 開催結果概要
ポスター最優秀賞(No.12 中谷 祐介)
ポスター優秀賞(No.24 矢野 諒子)
ポスター優秀賞(No.47 森下 剛匠)
ポスター優秀賞(No.48 小倉 亜紗美)

趣旨

2015年に国連により持続可能な開発目標(SDGs)が設定され、17項目のうち14番目に「海洋資源の保全」が、15番目に「陸域生態環境保全」があげられました。近年の「里海」や「里山」の取り組みは、積極的な管理と利用によってそこでの多様な資源を再生し創生するというもので、まさにSDGsの14番目と15番目の目標と整合しています。また、古くから瀬戸内地域は、降水量が比較的少なく渇水に悩まされてきました。そのため、ため池や用水路、地下水(井戸水や湧水)などの水環境の積極的な保全と利用が行われており、これらは「里海」や「里山」と同様に「里水」と定義することができます。また、この「里水」の取り組みは、SDGsの6番目の目標にあげられている「安全な水の確保」にも対応するものです。陸域と沿岸域とのつながりには水循環も大きな役割を果たしていることから、従来の「里海」と「里山」との関係だけでなく、「里水」との連携についても考慮していくことは有意義でしょう。さらに、昨年6月に政府が選定した「SDGs未来都市」には、広島県も16番目の目標である「平和の推進」という点で選定されています。流域圏の環境保全は、過疎化や高齢化などの地域課題の緩和にも貢献するものであり、広い意味で「平和」に寄与していくものです。
以上を踏まえ、今年の研究フォーラムでは、瀬戸内海の「豊かさ・資源の保全」に向けて「陸域環境保全」や「安全な水の確保」とともに目標を達成していくことを想定し、(1)瀬戸内海における貧栄養化の管理について、(2)藻場・干潟の未来について、(3)「里水」との連携について、多様な専門家を交えて議論したいと思います。

内容

9月5日(木)

(開会)

瀬戸内海研究会議の柳哲雄理事長のあいさつに始まり、関係者の方々より祝辞をいただきました。おわりに、フォーラム運営委員長である、広島大学の小野寺真一教授より趣旨説明が行われました。

(第1セッション)

「瀬戸内海の貧栄養化と流域圏の管理」というテーマで、清水様(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構 農業情報研究センター 研究員)からは陸域からの流入負荷に関する長期間の見積りと土地利用の変化についての感度解析、相田様(広島県立総合技術研究所 水産海洋技術センター センター長)からは、貧栄養化状態にある広島湾で、カキ幼生を採苗するための具体的工夫について、ご講演を頂きました。
また、菅様(兵庫県農政環境部環境管理局長)からは、あまりに低下した栄養塩濃度に対して海域での下限目標値を設定しようという、兵庫県独自の取り組みについて、最後に山本様(広島大学大学院統合生命科学研究科 教授)からは、貧栄養化の過程に関する学術的理解と、陸域負荷の増大による海域生態系の応答、さらには局所的施肥による生物増殖の促進事例について話題提供を頂きました。

(ポスター発表セッション)

瀬戸内海と周辺地域の文化・環境に関する研究や活動報告について、学生や研究者、市民団体等、様々な立場の58 名の方にポスター発表(ポスター前説明)を実施いただきました。

9月6日(金)

(第2セッション)

「藻場・干潟と流域圏との関係」というテーマで、まず中野様(環境省 水・大気環境局 水環境課 閉鎖性海域対策室長)より瀬戸内海における藻場・干潟の分布の現状とその保全・再生に関わる現行施策等についてご講演頂きました。次に一見様(香川大学 瀬戸内圏研究センター 教授)より、陸水流入の藻場・干潟へ影響について、齋藤様(岡山大学大学院 環境生命科学研究科 准教授)より海底湧水の生態系機能への影響について、ご講義いただきました。その後、井上様(北海道大学 北方生物圏フィールド科学センター 博士研究員)より、流域圏の土地利用変化による陸水流入を介した栄養塩供給量の変化、モデルによる将来予測についてご講演いただきました。最後にこれらの結果を踏まえて、これからの瀬戸内海に必要な藻場・干潟管理に関する総合討論が行われました。

(第3セッション)

「流域圏における里水と里海の連携(SATO NET)」をテーマに、SATO NET の概念の概要と基盤となる市民意識、さらにはその実現のための取り組みについて、従来からある沿岸のための上流域への一方向的なアプローチ等に限らず、多様な視点から5 人のパネラー(研究者2 人、行政関係者1 人、民間(NPO 及び企業)2 人)から話題提供をしていただきました。自然環境と人間生活との共生や資源の創生など、さらに、環境保全活動の実施による改善された環境から癒しを受けるといった多様な価値についての探索、それらの定量についても議論が行われました。

(総括・ポスター賞発表・閉会)

「瀬戸内海における持続可能な開発目標(SDGs)に向けた里水と里海の連携」をテーマに2日間に渡って、開催されたフォーラムの成果について、運営委員長より総括が行われました。
また、瀬戸内海研究会議の理事及び運営委員からの投票により若手・研究者を対象としたポスター賞として最優秀賞1名、優秀賞5 名の受賞者を決定し、柳理事長より表彰を行いました。

最後に、瀬戸内海研究会議の多田邦尚副理事長(香川大学教授)より閉会あいさつが行われ、フォーラム開催協力への御礼を申し上げるとともに、来年の「瀬戸内海研究フォーラムin 福岡」への参加が呼びかけられました。

関係機関

主催
特定非営利活動法人 瀬戸内海研究会議
共催
瀬戸内海環境保全知事・市長会議
協賛
広島大学大学院総合科学研究科、公益社団法人 中国電力技術研究財団、公益社団法人 瀬戸内海環境保全協会
後援
環境省、国立研究開発法人 水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所、国土交通省中国地方整備局、広島県、広島市、広島大学、株式会社中国新聞社

運営委員会

運営委員長
小野寺  真一(広島大学大学院総合科学研究科 教授、瀬戸内海研究会議理事)
運営委員
淺野  敏久(広島大学大学院総合科学研究科 教授、総合科学博物館 館長)
西嶋  渉 (広島大学環境安全センター センター長)
作野  裕司(広島大学大学院工学研究科 准教授)
山本  民次(広島大学大学院生命統合科学研究科 教授)
吉田  勝俊(国立研究開発法人水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所生産環境部長
瀬戸内海研究会議企画委員)
堀   正和(国立研究開発法人水産研究・教育機構 瀬戸内海区水産研究所主任研究員)
河村  敏成(広島県環境県民局環境保全課長)
上田  茂 (広島市環境局環境保全課長)