瀬戸内海研究会議

Home » 研究会議ご紹介 » 理事長あいさつ

理事長あいさつ

特定非営利活動法人 瀬戸内海研究会議・理事長 柳 哲雄(九州大学名誉教授)

近年、日本のみならず地球全体の環境の有限性が認識されるようになり、自然の恵みを永く安定的に得られるような人間の活動と自然環境との関わり方が求められ、社会の持続的発展が可能な国土を実現することが社会的に重要な課題となってきました。このような認識は瀬戸内海沿岸地域においても共通のものです。  瀬戸内海沿岸地域には、我が国の25%の人口が住まい、25%の工業生産をあげています。また、瀬戸内海海域は海上交通の要衝であり、同時に沿岸漁業の盛んな海域でもあります。一方、文化的・歴史的に見ると、この地域は古くから貴重な文化空間を形成し、加えて国立公園としても枢要な位置を占めるなど、世界でも希な特徴を有しています。そのため、人々の活動と環境との関わりが密接かつ直接的です。
瀬戸内海での過去の甚大な環境汚染は、種々の水質規制の強化が図られたことによって改善が見られてきたところですが、その一方で、内分泌攪乱物質による貝類の生殖異常、生物資源の減少等、新たな海洋環境問題が生じてきています。加えて、社会経済状況の変化に伴って、地域住民のなかに経済的な豊かさとともに精神的な豊かさへの志向が一段と強まり、瀬戸内海の自然環境は、沿岸地域住民が豊かな生活を営むうえで不可欠な精神的、物質的恵みをもたらす存在であることが認識されるとともに、環境資源として人類共通の生存基盤である地球環境の一部を構成するものであるとの認識が広まってきています。
重要な環境資源に位置付けられるこの瀬戸内海の自然環境を美しく健全な状態で将来の世代に引き継いでいくとともに、これまで育んできた瀬戸内海文化の継承と新たな文化の創造が強く求められています。
このことから、平成4年3月、任意団体の学際的研究組織として「瀬戸内海研究会議」が設立され、これまで20年間にわたって、その活動を進めてきました。
近年、瀬戸内海地域の生物多様性の確保という視点も含め、自然環境の保全・回復を図るとともに、自然の再生・浄化能力を活用しつつ、資源・エネルギーの循環的、効率的利用を進めるとともに、自然界の物質循環に負荷が少ない諸活動が営まれるような循環型の地域を形成し、持続的発展が可能な瀬戸内海を創造していくことが求められています。
そこで、今後、「瀬戸内海研究会議」は、自然科学はもとより人文・社会科学などあらゆる学問分野の英知を結集し、瀬戸内海の総合的な環境の保全と適正な利用等に関する調査研究を行うとともに、その成果を活用して広く普及・教育、提言を行い、さらに国内外の先進事例等の情報発信や技術の交流を通じて、研究者、住民、行政、事業者等の多様な主体が連携し、自然の営みと人の営みが融合した美しく豊かな瀬戸内海の実現を目指さなければなりません。
そのため、「瀬戸内海研究会議」の組織・体制を強化し事業の拡充を図るため、特定非営利活動法人として新たに出発しました。
瀬戸内海の環境保全を支える皆様方には、引き続き暖かいご支援、ご協力をお願いしてごあいさつとさせていただきます。