スナメリは、体長がだいたい160〜170cm、体重は50〜60kgの小さなクジラです。体の色は、銀白色をしています。頭は丸く、イルカのようなくちばしや背ビレはありません。背中の真ん中から尾ビレにかけて、高さ2〜3cmの隆起があるのが特徴です。
スナメリは、ペルシャ湾から日本にいたる、インド洋、アジア地域に広く分布しています。日本では、仙台湾から、伊勢湾、瀬戸内地域、西九州などの50m以浅の海域で多く見られます。日本海側では能登半島以西でときおり見られます。
かつて瀬戸内海にはたくさんのスナメリが生息していました。1970年代には約5,000頭はいたと言われています。スナメリは、水深の浅い沿岸や島と島の間、岬の先の流れの速いところなどが好みの場所でした。現在の生息数は不明ですが、かなり少なくなっていると思います。ほとんどスナメリを目にすることはありません。原因は海の汚染や船舶による事故、そしてなによりもスナメリの好む浅海域の減少といわれています。
スナメリの社会構造は未発達なようで、特に瀬戸内海においては、1〜3頭連れでいる場合が多いようです。ただし、小さい群れが集まって一時的に大群を作ることもあり、太平洋岸では、100頭ものスナメリの群れが確認されています。
スナメリは、瀬戸内海における食物連鎖(注)の頂点にあるともいえ、汚染物質を体内にためやすいといわれています。こうした意味から瀬戸内海の環境のシンボルとして大切な生きものであり、かつてスナメリがたくさんいた瀬戸内海は汚れのない豊かな海だったと自慢することができます。そして再び瀬戸内海に多くのスナメリを見かけるようになったときこそ、美しい海が回復したと考えることができます。
注 :自然界には、エサにするものとエサにされるものという関係が見られます。動物A → 動物B → 動物Cのように、エサにするものとエサにされるものがつながっている状態を、食物連鎖といいます。
食物連鎖の例 : 植物プランクトン→動物プランクトン→イワシ→スナメリ
なお、どのような動物も、死んだあとには微生物によって分解され、植物プランクトンなどの栄養となります。