趣 旨

 

 瀬戸内海はその経済的、地理的な条件や遠浅で穏やかな海域の特性等を背景に、特に戦後の高度成長期には産業が沿岸に集積し、多くの浅海部が埋め立てられ、工場排水や生活廃水により、赤潮が頻発した。瀬戸内海は「瀕死の海」と言われた。
 このような状況を受けて、瀬戸内海環境保全知事・市長会議を中心とした地域からの働きかけにより、昭和48年7月に瀬戸内海環境保全臨時措置法が制定され、昭和53年6月には瀬戸内海環境保全特別措置法(以下「瀬戸内法」という)に恒久法化された。
 瀬戸内法では、瀬戸内海環境保全基本計画(以下「基本計画」という)の策定、特定施設の設置の許可制、汚濁負荷量の総量規制、指定物質の削減指導、自然海浜保全地区の指定、埋立て等についての特別の配慮等の特別な措置が規定されている。
 こうした瀬戸内法を軸とした各種の施策により、国や関係する地方公共団体、事業者、住民等が連携して環境保全に関する取組みがなされてきた。例えば各セクターの参加によって、「社団法人瀬戸内海環境保全協会」が設立され、環境保全思想の普及啓発にかかる事業も積極的に展開されたこと、域内の学識者、研究者により組織された「瀬戸内海研究会議」の学術・研究交流なども挙げることができる。
 しかし、瀬戸内法施行以降においても、港湾整備、都市再開発、廃棄物処分等を目的とした埋立面積は浅海域を中心に年平均400haを上回っている。また、これらの埋立ての多くは都市の地先海域において行われることから、住民が立ち入ることのできない水際線が増え、人が海と触れ合う場の減少(親水機能の低下)につながっている。
 このように、瀬戸内法が施行されて四半世紀が経過し、各種施策の実施により、人間活動に起因する環境への負荷の軽減について一定程度の成果が見られるなか、一方で過去の開発等に伴って蓄積された環境への負荷や新たな環境問題への対応など多くの取り組むべき課題が指摘されている。
 また、瀬戸内海の環境を取り巻く状況−環境保全に対する考え方−も、当初の水質改善、有害物質対策等の公害対策中心のものから、環境基本計画等に見られるように、生物多様性の保全、健全な水循環の回復・確保、物質循環の促進、豊かな自然との触れ合いの確保など幅広い環境保全を目指すものに変化してきている。
 そのため、現在「瀬戸内海」は、生活、産業等を含む人間と自然との共生の場として、海域毎の地理的、自然的、社会経済的な条件を考慮しつつ、今後とも一体的、総合的に保全されていくことが希求されている。
 かかる瀬戸内海における環境保全施策については、これまでの施策の結果やその検証を踏まえ、今後いかなる展開を図っていくかは、いつに瀬戸内海だけの課題ではなく、国内外の閉鎖性海域の共通の課題である。
 そこで、かかる瀬戸内海という「場」を通じて研究者、NGO、行政がそれぞれの立場から話題を提供し、全体の中で討議する「瀬戸内海セッション」を開催し、これまでに瀬戸内海で何が行われてきたか、また何が行われなかったのか、他の閉鎖性海域の取り組みとの情報交流を通じ、21世紀においてどうすべきかを検証・提起する。

 

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